日本にNISAがあるように、カナダにはTFSAなるものがあります。
この2つ、全く同じではないにせよ、コンセプトはとてもよく似ています。
双方とも政府が
「国民のみなさん、各自、貯蓄をガンバってくれたまえ!」
と導入した貯蓄支援制度で、仕組みの目玉は、NISA内・TFSA内の投資で得られた利益は非課税であるという点です。
要するに、NISAもTFSAも、非課税貯蓄口座というわけです。
もちろん入金額には限度がありますが、お金を貯めて行こうというのなら、これを利用しない手はありません。
ということで、今日はカナダのTFSAについて解説したいと思います。
TFSAあらまし

TFSAとは、Tax-Free Saving Account の略で、カナダ政府により、2009年に導入されました。
この「Tax-Free Saving Account」というネーミングがある種の誤解を招いているとも言われているのですが、Saving Account(普通預金口座)といっても、この言葉から一般的にイメージされる口座と TFSAは、内容が大きく異なります。
TFSAでは、政府により設定された一年間の非課税投資額の限度内で、株や投資信託などを運用します。
しかし、そこで得られるあらゆる利益に対して、私たちは税金を払う必要がありません。
TFSA外なら課税対象になる利益が、TFSA内なら非課税になる、というわけです。
その年に入金できる最大額(コントリビューションルーム=contribution room)は、毎年政府が設定します。
そして、TFSAはNISAと異なり、利用期間に制限はありません。
つまり生きている限りは、ずーーーっと続けることができます。
TFSAを開設するための条件
カナダに居住する18歳以上で、SINナンバー(社会保険番号)をお持ちの方なら、誰でもTFSAを開設できます。
但し、19歳を成人年齢とする州も国内に半分くらいあるので、お住いの州の法律をチェックしておきましょう。
成人年齢が19歳の州にお住いの場合、TFSAの開設は、19歳になってからですが、18歳のときに使えなかったコントリビューションルームは繰り越されて19歳以降に使えますので、まあそこはフェアですね。
それから、どうやらSINナンバーさえ持っていれば、カナダに居住していなくてもいいみたいですが、その場合は毎月口座にある総額の1%を税金として支払わなくてはならないようです。
どこで開設?
銀行
保険会社
信託会社
信用組合
などなど。
訳が分からなければ、自分の銀行の窓口で、TFSAの口座を作りたいのですが・・・と言ってみるといいと思います。
これまでの限度額
TFSA が導入された2009年から、これまでの入金限度額は以下の通りです。
インフレによって調整されているため、金額は少しずつ上がっていますね。
2009年 5000ドル
2010年 5000ドル
2011年 5000ドル
2012年 5000ドル
2013年 5500ドル
2014年 5500ドル
2015年 10000ドル
2016年 5500ドル
2017年 5500ドル
2018年 5500ドル
2019年 6000ドル
2020年 6000ドル
2021年 6000ドル
2022年 6000ドル
その年の限度額ぎりぎりまで使い切らなかった場合は、未使用分が翌年に繰り越されます。
たとえば、2021年に最大限度額6000ドルのうち5000ドルしか入金しなかった場合、未使用分の1000ドルは2022年に繰り越されるため、2022年に入金してもよい金額は、最大限度額6000ドル+前年の未使用分1000ドルで、7000ドルになります。
つまりは、ですよ、2022年に初めてTFSA を開設された方は、2009〜2022年の限度額の総額8万1500ドルが、今年のコントリビューションルームとして利用できることになります!
なお、TFSA の限度額は、個人の収入に応じたものではなく、誰もが同じ限度額を平等に享受します。
投資対象
投資オプションとしては、
投資信託
株
債券
GIC(元本保証の定期預金)
中小企業の特定株式
現金
などがあります。
とにかく、好きな金融商品、好きな運用方法を選んで、限度額内で資産形成に励む、ということですね。
複数の金融機関・投資対象も可
限度額をはみ出さない限りは、複数の金融機関を利用して、複数の投資対象で運用しても、全く問題ありません。
ホント、自由にやらせてくれます。
お金を引き出したいとき
TFSA内のお金は、いつでも簡単に、しかも非課税で引き出すことができます。
ただ、注意が必要なのは、引き出した金額は、翌年の限度額に加算されるという点です。
つまり、一度引き出した金額を同年中にもう一度入金し直したいときは、その年のコントリビューションルームに未使用の部分がなくてはなりません。
その年に入金した金額は、引き出そうと引き出すまいと、「その金額分のコントリビューションルームは使ってしまっている」という扱いになります。
限度額を超えた入金はペナルティ
もうひとつの注意点。
限度額を超えて入金してしまうと、ペナルティが課せられます。
超過分の1%を毎月税金として持って行かれてしまうので、気を付けましょう。
そう、気を付けなくちゃいけないんです。なぜなら・・・
自己管理・自己責任
CRA(カナダ歳入庁)は、毎年の合計入金額は記録していても、私たちのために出し入れの全てをいちいちチェックしてくれるわけではなく、うっかり限度を超えてしまったときに、親切に指摘してくれたり、入金にストップをかけてくれるようなシステムを持っていません。
ですので、ペナルティが課せられるようなミスをしないように、自分自身でしっかり管理しておく必要があります。
自由にやらせてくれるんだけど、同時に自己管理・自己責任がセットで付いてくるわけですね。
デイトレードはNG
それから、デイトレード的な激しい売買行為は、TFSA内ではNGです。
自分にそのつもりがなくても、CRAから、「これ、ビジネス行為ですよね?」と言われてしまえば、課税されてしまうことがあります。
始めない理由が見つからない
ここまで読んでいただいて、いかがでしたか。
注意点はいくつかあるものの、TFSA はメリットだらけのシステムだと思います。
なんらかの形でお金を貯めていこうと思われるなら、まずは毎年、TFSA の限度額いっぱいまで入金することを目標にするところから始めてみてはいかがでしょうか。
ホント、始めない理由が見つかりません。
私の場合(おまけ)

さて、私のTFSA 口座は、銀行で作りました。
ほぼ、ちんぷんかんぷんの状態で口座開設に臨みましたが、ひとつだけはっきりしていたのは、毎月定額をコツコツと積み立てていきたい、ということでした。
毎月決まった日付に決まった金額を普通預金口座からTFSA 口座に自動的に移動させる。
そして後は放置。
担当者の人には、この設定をお願いしました。
私がやりたかったのは、まとまった金額を一括で入金するのではなく(まとまった金額が出せないのも理由のひとつですが)、毎月相場がいいときも悪いときも同じ金額で淡々と買い続ける、ドルコスト平均法でした。
そのように伝えると、「近いうちにお金を引き出す予定があるか」と質問されました。
担当者の方のアドバイスは、「5年以内に引き出す予定があるなら(たとえば不動産や車の購入資金の一部として使うために)GICがオススメ」。
でも、「近いうちに引き出す予定がなく、10年、15年、20年と中長期で積み立てを捉えていて、ドルコスト平均法の恩恵を最大限に享受したいなら投資信託がいい」、ということでした。
私は最低15年間は一切引き出さないつもりだったので、投資信託を選択し、毎月私の誕生日にあたる日付に入金できるよう設定してもらいました。
今は相場が下がっていますが、毎月淡々と買い続けています。
下落時こそ、たくさん買えるわけですから、今後が楽しみ!とむしろ喜んでいます。
カナダの暮らしの中で、一刻も早く始めた方がいいことのリストのまさに筆頭に来るのがTFSAだと思います。
毎月、50ドルでも100ドルでもいいので、とりあえず始めてみてはいかがでしょうか。
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