カナダのNISA、TFSAについては先日投稿しましたが、今日はカナダのiDeCo、RRSP(Registered Retirement Savings Plan)についてお話ししようと思います。
RRSは、個人年金とか私的年金っていう位置づけですね。
老後に備えた貯蓄として、銀行、信用組合、信託会社、保険会社などでRRSP用の投資口座を開設し、月々または好きな時に入金します。
入金と言っても投資口座というからには、RRSP口座は現金をコツコツと貯金していくための口座ではなく(現金も選択すれば可能ですが)、TFSAのように投資信託、株、債券、GIC、ETFなどお好みの投資商品を購入していきます。
そして口座内で得られた全ての利益、運用益は、その時点では非課税です。
RRSPの最初のRは登録制という意味ですので、この口座は開設すれば、政府に登録されることになります。
目玉は所得税の控除
RRSP最大の目玉は、口座に入金すると、その入金額が「課税対象の所得」から差し引かれるという点です。
例えば、年収5万5000ドルの人が5000ドルをRRSP口座に入金したとします。
すると課税されるのは、5万5000ドルから5000ドルを引いた5万ドルになります。
そう、所得税の控除!
そしてここで注目すべきは、課税のブラケットです。
以下は2022年度の連邦税(国税)の税率ブラケットです。(実際にはこれに州税も加算されます。)
・所得50,197ドル以下の連邦税:所得の15%
・所得100,392ドル以下の連邦税:最初の50,197ドル分が15%で残りの50, 195ドル分が20.5%
・所得が155,625ドル以下の連邦税:最初の50,197ドル分が15%、次の50, 195ドル分が20.5%、残りの55,233ドル分が26%
・所得221,708ドル以下の連邦税:最初の50,197ドル分が15%、次の50, 195ドル分が20.5%、その次の55,233ドル分が26%、残りの66,083ドル分が29%
・所得221,708ドル以上の連邦税:最初の50,197ドル分が15%、次の50, 195ドル分が20.5%、その次の55,233ドル分が26%、そのまた次の66,083ドル分が29%、それ以上が33%
先ほど挙げた例を見て、RRSPにお金を入れた場合と入れなかった場合の違いを考えてみてください。
5000ドルを入金すると、税率のブラケットは所得の15%のみとなり、入金しなかった場合と比べて支払う税金の額が1000ドル減ることになります。
そうなんです。
税率ブラケットを下げることができれば、RRSPの利用は大きなメリットとなるのです。
ちなみに、入金できる金額には限度があり、2021年度は、前年度の収入の18%か27,830ドルのどちらか金額が低い方でした。
おっと!言い忘れてましたが、RRSPは働いていなければ(前年度の収入がなければ)始めることができません。
どれだけ入金できるかという入金枠は、確定申告後にCRAから送られてくるNotice of Assessment に書かれています。
この入金枠の金額は、使わなければ繰り越されます。
納税は先送りであって非課税ではない
ここからは注意点の説明です。
まず、先ほどの例で、
「年収5万5000ドルの人が5000ドルをRRSP口座に入金したとすると、
課税されるのは、5万5000ドルから5000ドルを指し引いた5万ドルになります。」
と説明しました。
で、この課税されなかった5000ドルですが、未来永劫なる非課税の権利を獲得したわけではありません。
課税される日は必ず来ます。
それはRRSPの口座から引き出す時です。
引き出せば、その金額はその年の収入とみなされて課税されるというのが仕組みなのです。
大前提として、RRSPはリタイア後の生活を支えるための貯蓄ですから、通常であれば老後に引き出すことになります。
ということは、通常であれば、働いていた時の方が収入がある分、税率も高いので、退職後に引き出せば、たとえ収入とみなされても税率は低いはず。
だからお得ですよ、という考え方です。
通常であればね。
でも、ひょっとすると老後に何かのビジネスを立ち上げて成功し、若い時よりグッと収入が増えるとか、いい意味で通常通りに行かなかった場合は、この限りではありませんが。
なお、RRSPに入金できるのは、71歳の誕生日を迎えた年の12月31日までです。
その後は、RRSP内のお金はRRIF(Registered Retirement Income Fund)と呼ばれる口座に移され、毎月決められた最低限の一定額以上を引き出さなくてはなりません。
そして繰り返しになりますが、引き出せば税金がかかります。
引き出さないのが吉
RRSPは、老後のための貯蓄であるため、基本引き出さないという姿勢を維持すべきですが、そうは言っても人生いろいろです。
人生のある局面で何らかの事態に陥り、どうしてもRRSPに入れたお金が必要になることがあるかもしれません。
この場合も、注意が必要です。
引き出した金額は収入とみなされ、課税されることは説明しましたが、それに加えてもう一つ厄介なことがあるのです。
それは源泉徴収税というかペナルティというか手数料というか、そういうものの存在です。
引き出した金額に応じて、このようなものまで課せられてしまうのです。
・5000ドルまでの引き出しなら10%(ケベック州は5%)
・5000ドルから1万5000ドルまでは20%(同10%)
・1万5000ドルを超えると30%(同15%)
こりゃ、引き出したら、損する仕組みですな。
二つの例外
ただ、RRSPからペナルティなしでお金を引き出すことができる例外が、二つだけあります。
一つは、初めて不動産を購入する際の資金として引き出す場合(Home Buyer’s Plan)。
現在は最大で3万5000ドルの引き出しが可能ですが、15年以内にRRSP口座に引き出した金額を返さなければなりません。
もう一つは、本人または配偶者がフルタイムの学生として学校に戻ったりトレーニングを受けたりする際の資金として引き出す場合(Lifelong Learning Plan)。
1年(calendar year)に1万ドル引き出すことができ、10年以内に返済します。
この措置は子供には使えません。
私の場合と感想
私の労働形態は限りなくフリーランスに近いため、税金は確定申告の際に一気に支払うことになります。
そして毎年、収めなければならない金額を通達されるたびに目玉が飛び出るような思いをしております。
全然たいした収入じゃないにもかかわらず。
私の確定申告をやってくれているジューンさんには「使う予定のない遊んでるお金があるならRRSPに入れなよ」と毎年言われますが、遊んでるお金なんて、ないのよ。
それでも私は前年度のRRSPの締切である2月末までに、確定申告の準備をして、どうするかを考えます。
今年は少し入れましたが、入れたら最後、自由度が減るからなー。
どうすれば一番いい感じになるか、正直、わかりません。
ずっと昔は毎月定額を入金していましたが、お金を必要とする事態が生じて、かなりのペナルティを払って引き出した記憶があります。
運用益もありましたが、結局損をしました。
私の感想としては、収入が多い人、富裕層の方々にとっては是非とも利用すべき良いシステムだと思います。遊んでるお金、いっぱいあるだろうし。
でも私なんかだと、TFSAの上限を満たす方が絶対先です。
だいたい、入金できる金額は前年度の収入の18%か27,830ドルのどちらか低い方とか言ってますが、27,830ドルを毎年RRSPにつぎ込んでロックするとか普通の人には超非現実的。
おまけに、15万ドル以上の年収がないと「27,830ドル」という数字は出てきませんがな。
あと、言い忘れましたが(すみません、忘れてばっかりで)、配偶者枠というのもあるので、収入の高い人はこの枠を利用するとさらにお得でしょうか。
もちろん収入の18%くらいは貯蓄に回したいところですが、それを全てRRSPの口座に入れて引き出すと損するような状況に自らを仕向けるとか、ちょっとないかな。
だから、やるならやってることを忘れてしまうくらいの少額を毎月淡々と投資信託で続けていこうかな、ぐらいのマイルドな意気込みで行うとちょうどいいかもしれません。
一方で、ちょっとしか入れないと税金控除としての利点が十分に発揮できませんが・・・
うーん、結論として、TFSAは是非ともやった方がいいと思いますが(始めるなら絶対こっちが先)、RRSPは個人的にはそうでもないかな。(一応私も気が向いた時だけ?入金してますが。)
ま、余裕があれば、やらないよりはやった方がいいはず。ほんのちょっとでも今この瞬間の節税になるしね、というのが私の偏見に満ちた感想です。
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