白内障の手術と奇妙なシンクロ

日々のこと

村上春樹さんの新作が先日届きました。日本のAmazonに注文すると、だいたいいつも4〜5日で届きます。送料は本代より高くつきますが。

私は20歳くらいの頃から現在に至るまで、村上春樹さんの大ファンです。

この新作『街とその不確かな壁』は、1980年に「文學会」という文芸誌に発表された「街と、その不確かな壁」という中編小説が元々の形ですが、村上さんご本人が納得がいかないということで、書籍化はされませんでした。

その後、その納得のいかなかった「街と、その不確かな壁」を書き直そうという試みで生まれたのが、1985年に出版された『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』です。

しかし40年の時を経て、また別の対応を取ってみようと思うようになった、そして『街と不確かな壁』という今回の長編新作が書き下ろされた、というのが新作誕生の経緯らしいです。

さて、村上作品の中で私にとってのNo.1は、いつも変わらず、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』です。

本を読んであれほど心を激しく揺さぶられたのは、本当に後にも先にも、ほとんどあの本だけです。寝込むほどのショックでした。

それは、私がまだ20歳そこそこと若かったから、ということも言えるでしょうが、それにしても圧倒的な読書体験でした。

その本の流派の別バージョンということで、新作はホント楽しみでした。

実はまだ読んでいないのですが、その理由はまず最初に『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を再読したいと思ったからです。そして今、再読中なのであります。(この本も結構長いです。)

***

ところで話は全然違うのですが、火曜日にロバートさんが左目の白内障の手術を受け、手術後、私は車で病院に迎えに行きました。行ったことのない病院で勝手がわからず、病院の前で路駐しているところに、ロバートさんが割としっかりとした足取りでこちらに向かって歩いてきました。

私の想像とは異なり、眼帯はしておらず、代わりに光を避けるためのサングラスをしていました。黒い普通のサングラス。

車の中で手術その他についていろいろ話してくれました。

手術中は麻酔が効いているはずなのに、目を何かで突かれるたびにめちゃ痛かったこと、今は全然何も見えなくて不安なこと、5kg以上のものは今後10日間くらい持ってはいけないこと、シャワーでは目に水がかかってはいけないこと・・・などなど。

そんな話を運転中に聞いていると、「あれ?」となんか引っかかるようなデジャブ感を覚えました。

その目を突かれたり、光から目を守るためのサングラスとか、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』の昨日ちょうど読んだ箇所とそっくりそのままだったからです。

本の中では主人公が「夢読み」になるために、ナイフで両目を刺され、印をつけられるんですが(小説の中では全然痛くないことになっています)、その後は暗いガラスの入った眼鏡をかけ、光を避ける生活が始まります。

おお、偶然!って思いましたが、目の回復について不安がっているロバートさんには、こんな話はとてもじゃないけどできません。

早く良くなるといいな。

そして、何十年ぶりに読み返している『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』ですが、やはり私にとって特別な小説であるということを、嫌という程再確認しています。

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