カナダの公共交通は、車椅子に乗った人たちや歩行器につかまって歩く高齢者、ベビーカーを押す母親に、とても親切にできています。
例えばバスなら、乗車する際には普通の人たちにも乗車口を下げてくれるので、少し高いところに上がっていくという感覚はありません。
車椅子や歩行器やベビーカーの人が乗車する時には、運転手の操作で乗車口に渡し板のようなものが設置されるため、彼らは車輪付きでも楽に乗車できます。
また、車内の先頭部分は優先席になっており、座席も折りたためるので、例えば車椅子の人が乗ってきた場合には優先席に座っていた人たちはサッと立って、座席を折りたたみ、別の場所に移動します。
そして車椅子の人は、そこに自分を固定させます。
私が移住したばかりの頃、とても驚いたのは、こうした人たちに「ご迷惑をおかけしてどうもすみません」というような様子が一切なかったところです。
日本とは全然違うなあ、と思いました。
もちろん、よくしてもらって当然、と傲慢な訳でも全然ありません。
いたって普通。それを取り巻く健常者というか、他の乗客のあり方もいたって普通。
何か特別なこと、というような感覚は誰にもありません。
誰の心にも何の波風が立ってないっていう。
私はこの普通の感じがとても好きです。
さて、話は変わって、先日バスに乗った時のことです。
車内の座席は埋まっており、私を含め何人かは立っていました。
私はボケッと窓の外を見ながらオーディブルを聞いていたのですが、気づくと一番前に座っていた乗客の1人が、運転手に向かって何やら大きな声で言いはじめているようです。
どうしたんだろうと思い、オーディブルを停止して耳をダンボにすると、その40代くらいの男性は運転手のブレーキの掛け方にクレームをつけているみたいでした。
あ、そういえば確かに、と私も思いました。
停留所や赤信号で止まるたびに、急ブレーキをかけた時みたいに身体が一旦大きく前に揺れて、反動で後ろに戻るということが繰り返されていました。
ブレーキをかけ切った後、一瞬の静止の後にちょっとだけ身体が前後に揺れるって、どんなバスでもありますが、その日のバスはあまりにも揺れが極端でした。
私は別のこと(オーディブル)に集中していて、その乗客が状態を言語化してくれるまで、特に気にも止めていなかったのですが、確かにそのようなことが起こっていました。
そしてそこから運転手と乗客の言い合いが始まったわけです。
「そのブレーキの掛け方、おかしいだろう」と乗客。
「バスの性質上、これが普通」と運転手。
乗客は「自分の祖父の方がはるかに上手く運転できる」とか、反論されると「言い返してくんなよ」とか、かなりきつめです。
トドメは「言い訳はやめて、もっとマシな運転しろや」という捨て台詞?でした。
そんな2人の言い争いの最中も、停留所はやってくるし、赤信号もあらわれます。
このバスの運転手は確かにブレーキの掛け方が下手で運転センスもないと思いましたが、頭にターバンを巻いた移民の60代くらいの人で、また乗客全員の前でクレームをつけられるという状態で、ちょっとかわいそうになりました。
私はバスが止まるたびに「今度こそ普通に止まってくれ」と祈るような気持ちでしたが、運転手はどうやっても上手く止まることができません。
ブレーキのコツがつかめていないようで、止まるたびに急ブレーキをかけた時のような身体の揺れが乗客全員に生じています。
ただ、ちゃんとやろうと思っている気持ち、めちゃ緊張してる感じは、ブレーキをかけている時にひしひしと伝わってきます。だって彼のブレーキ、ますますぎこちなくなってきてるんだもん。
私は運転手が声を荒げて反論している時に事故るんじゃないかと思い、気が気ではありませんでした・・・
最後までこんな状態でしたが、私は降りるとき、運転手さんにはちゃんと「サンキュー」と言いました。
彼のせいだと言うよりも、彼を雇ったバス会社がもっと研修の徹底をするべきなんでしょうね。上手く止まれない人は最初っから雇わないとか。
確かに、しっかり手すりにつかまってないと、かなり危なかったもん。
バスのブレーキってかけるの難しいのかな。
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